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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第15章 文枕
【1】

 猿彦が日嗣の元を訪れたのは、それから数日が経った日の昼だった。
「この部屋、こうして見ると結構ものがあったんだな」
「……」
いつも出入りしていたはずの殺風景な部屋は嵐が通り過ぎた後のように様変わりしており、その物珍しさに猿彦はしげしげと室内を見回す。
 あの後、我に返った日嗣は散々に荒れながら何度も部屋を出ようとして衛士と揉め、月読に会わせろと怒鳴り散らし、またどちらも叶わぬことで更に憤って物に当たり散らしていた。
 それはひどく子供染みた振る舞いだったが、今までのことを思えば猿彦にはいっそいい変化のように感じられる。その、友の嫌う生きた人形のような月讀宮の衛士達だったが、友自身もかつては同じような顔をしていたのだから。
 美しくはあったが何もかもがつまらなさそうで、時の止まったような無機質な表情をしていた。あの夏の日の午後、一人の少女に手を伸ばすまでは──友は過去の罪に囚われたまま白黒の世界に在って、あらゆるものを滞らせていた。
 それがやっと綻んでほろほろと崩れ出し、ようやく流れのままに転がり始めた。その動き始めた世界はどれほど目まぐるしく、鮮烈な色を伴ってその瞳に映っているのだろう。
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