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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第14章 墨染めの恋
ただ外で一度、声に驚いた夜鳥が甲高く鳴き飛び立つと、室内は再び静寂に包まれる。後には水煙草の水泡が弾ける小さな音と、日嗣の深い息継ぎの音だけが空気を揺らした。
 「……私かて、あのとき分かろうとしたのです」
そして次に月読の耳に届いたその声は、口調こそ神の振る舞いのものに戻っていたが……幼い子供が泣くのを我慢している時のような、涙や苦痛を滲ませたものだった。
 「あの時、佐久夜が身籠った子は真に私の子であると──しかし私はそれを受け入れられる程の時を、信じるに足るだけの時間を共に過ごしてはいなかった……。彼女が国津神の子であるなら尚更、その生命の理(ことわり)を深く知っていたはずなのに……十月十日を待たず、たった一夜の契りで成ったその子が本当に私の子であったのか……私には本当に分からなかった……!」
「……」
「けれどもそれを疑い、責めたことこそがそのまま私の罪なのでしょう……子は無事に生まれてくれた。ならば例え受け入れることができなくとも、伍名のようにはできなくとも、もっと他の道を選ぶことができたかもしれない。けれども自らの卑小さにそれすら出来ず──だからこそ私は数千もの年月、この魂を炎に焼かれてきた」
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