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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第14章 墨染めの恋
「……愚か者め。どうせまた、お前は逃げてきたのだろう……そしてやり場のない想いを憤りに偽ってここへ来た。そして偽りの憤りであるからこそ、私にはお前が何をそんなに怒っているのか……さっぱり判らぬ」
「……ッ」
途端に言葉を無くした日嗣に、月読は億劫そうに体を起こしながらも殊更深くその顔に笑みを刻み、わざとらしく、残念そうに吸い口を噛んだ。
「……お前は一応姉上お気に入りの玉の調度ゆえ、蝋紙一枚程度の慈悲は残してやったつもりだったが……これほどつまらぬ振る舞いをするのなら、やはりあの花は私が散らすべきであった」
「っ……ふざけるな……」
「ふざけておるのはお前だ……日嗣。苗かてある程度育たねば田には植えられぬ。しかもあれは取り分け麗しき神田(しんでん)……ならば永劫、放置するより月を映してやった方がまだ風情があるというもの。……己の未熟さを当てこすりに来たのなら早々に去ね。そうしていつまでも姉上の御威光の下、やわな苗の神で在るがいい」
「──っ俺だって……俺だって、そう在りたくて在った訳じゃない!!」
「……」
 しかしその突発的な疾風(はやて)のような絶叫に、月読は答えなかった。
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