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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第14章 墨染めの恋
 物であろうと人であろうと自分の興味を惹かないものには一切関わらず、関わったとしても灰塵と同じような扱いしかせぬそれが……覚え、口にしてしまった少女の名。それは日嗣には苦々しく、また腹立たしいものだった。
 この神は、そうして見出だしたもので束の間を“遊ぶ”のだから。壊されかけた少女の姿を思い出せば、怒りが油のように煮えたぎる。
 しかし月読はそんな日嗣にも構わず、喋り口の合間に煙を味わいながら続けた。
「もう会うたのか。いや、お前には空(くう)の枝々をひょいと渡る猿の友が居ったな……」
「はい」
「それでお前は何を見てきた……いや、何を見ようとも、成り行きで朱印を刻んだだけのお前と私との違いは、理解したであろう……?」
「……っ」
薄ら笑う自分と似た顔に、日嗣は鏡を割るかのように別の顔を作って見せる。しかしそれさえ楽しむように、目の前の神は指先で管を遊ばせた。
「そんな渋い顔をするな……むしろお前かて喜ぶべきところであろう。あれでもう、いかな男神とて神依には近寄れぬ……煩わしい羽虫を除けるにはちょうどいいではないか」
「それは──私も含め、という訳ですか」
「……成程。……そう言われれば、そうともなるな」
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