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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第14章 墨染めの恋
 しかし目の前に在るのは間違いなく、想う少女の肉体をいたぶり、その蜜を啜った男神。日嗣は無駄に広いその部屋をずかずかと進むと、月読の眼前まで迫り立ちはだかった。
 「──大叔父上」
「……何をしに参った……私はこれから眠るのだが?」
それに対し月読は、起き上がるのも面倒といったふうに長く吸い口に口付け、果実のような風味の煙をたしなむ。それは日嗣の神経を逆撫でするかのようで、事実そうであったのだが──それに気付いた日嗣は無理矢理に込み上げてくるものを抑え、先を続けた。
「私が何故ここに参ったか、お分かりにならないはずがないでしょう」
「……やかましく騒ぎ立てるな。せっかくの余韻が失せる……」
それが煙草のものなのか別のものなのか、悠然と在る月読に日嗣はあからさまに顔を歪めて見せた。しかし月読は喉で笑い、日嗣を見上げる。
「神依か」
「……ッ」
そしてその唐突に出された名に、日嗣はぐっと押し黙った。
 時に人の行く末を視、先を知ることのできるこの神は、その知り過ぎる神威のせいで何もかもに興味が失せたような、厭世の境地で日々をやり過ごしている。
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