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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第14章 墨染めの恋
 原初の男神と女神のように……あたかもその復讐のように、今度は女が逃げ出してしまうのではないか。
 そう思ってしまえば、まだ若い、居丈高の神たる魂まで慟哭しているような、そんな心地になった。宙に在った手は自然と胸元に戻り、痛みを痛みで抑えるように折り重なった衣をきつく掴む。
 「俺に触れられるのは……嫌か……」
「っ……ご、ごめ……なさい、……」
眉を下げ、拒まれた苦痛と共に自分を覗き込む日嗣に、神依はその強張った顔の筋肉を何とか動かし、歪な笑顔を浮かべてみせる。
 目の前に在る男神が、ずっとひとりぼっちだったことを忘れていた。だから本当は、拒絶してはいけなかった。けれど……
 今日は高天原では何か、大事な祭祀があったのだろうか。きっとそこから無理に駆け付けてくれたんだと、神依は精一杯、その心を酌もうと笑った。
「わ……私……、お酒、溢したり……寝不足で、気持ち悪くなって……」
「……」
「き……汚い、から……。でも日嗣様は……今日は、特別な、格好してるから……」
「神依──」
「……汚しちゃ、いけないと思って……」
「……ッ」
しかしその言葉は互いの罪悪感を深めただけで、互いの優しさを交じらせることは決してなかった。
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