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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第14章 墨染めの恋
 雨戸は少し立て付けが悪く、それ以上は開けなかった。着替える間もなく、もはや邪魔とも思える剣や重なった衣を寄せ中に上がると、何かを燃やしたような臭いが鼻をつく。
(何だこれは……いや)
今はそれよりも、家人の安否だ。
 「神依……?」
本来は日当たりのいい、縁側の脇にある神依の部屋。時々日嗣の目にも触れることもあったが、今は閉め切られ呼び掛けても気配すら感じられない。
 ただ廊下の先を見れば点々と窓や襖が開けられており、日嗣はそれを追ってみることにした。元々、広くはない家だった。
「……」
 歩を進めればぎし、と時折床が鳴って、酷く不気味なものに思える。たった数歩のはずが長く長く感じられて……その部屋に辿り着いた時は、もう数刻を費やした心地になっていた。
 そこは日嗣でさえ未だに立ち入ったことのない部屋。家の中で最も間取りの良いその部屋は、日嗣らが訪れる時は障子に秘され、もしかしたら神依自身もただの客間程度にしか思っていなかったかもしれない。
 その部屋の、僅かに空いた襖からは橙色の灯が漏れて──
「……、」
「……っ!?」
少しの勇気と共にスッと襖を開いた瞬間、驚愕に息を呑む音と眼差しが、紫電の如く日嗣の胸を貫いた。
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