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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第14章 墨染めの恋
きっと来訪者を拒んだのだろう。しかしその来訪者は、力尽くでそれを破った。
けれどもそれを視ることができない日嗣は気にした風も無く、足早に跳び石を渡っていく。
「──?」
そしてその道の先で、一匹の兎が行ったり来たりを繰り返しているのを見付けて足を止めた。この小島で初めて目にする、薄い桃色の毛。
(あれは……因幡兎?)
それは先程まで対していた男神の眷属。昔、伍名が救った兎神の一族の者だった。
「お前は──」
「……!」
日嗣が近付けば、兎神はその小さな体をなおすくませ耳を倒し、丸石のように固まってしまう。しゃがんで手を差し伸べれば体が小刻みに震え出し、極度に怯えられていることに気付いた日嗣は、その恐怖の中に月の神の残像を見た気がして再び立ち上がった。
後から来た猿彦もそれを一瞥し、家の方へと向かう。
……門をくぐった先は、しんと静まり返っていた。
「……」
日嗣は眉を寄せ、辺りを窺う。
物伝いに聞こえる食器が触れ合う音、忙しなく行き交う小さな足音、想い人の笑う声……昨日まではそんな、家に近付くたびに感じられる人の気配が好きだったのに。
けれどもそれを視ることができない日嗣は気にした風も無く、足早に跳び石を渡っていく。
「──?」
そしてその道の先で、一匹の兎が行ったり来たりを繰り返しているのを見付けて足を止めた。この小島で初めて目にする、薄い桃色の毛。
(あれは……因幡兎?)
それは先程まで対していた男神の眷属。昔、伍名が救った兎神の一族の者だった。
「お前は──」
「……!」
日嗣が近付けば、兎神はその小さな体をなおすくませ耳を倒し、丸石のように固まってしまう。しゃがんで手を差し伸べれば体が小刻みに震え出し、極度に怯えられていることに気付いた日嗣は、その恐怖の中に月の神の残像を見た気がして再び立ち上がった。
後から来た猿彦もそれを一瞥し、家の方へと向かう。
……門をくぐった先は、しんと静まり返っていた。
「……」
日嗣は眉を寄せ、辺りを窺う。
物伝いに聞こえる食器が触れ合う音、忙しなく行き交う小さな足音、想い人の笑う声……昨日まではそんな、家に近付くたびに感じられる人の気配が好きだったのに。

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