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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第14章 墨染めの恋
日嗣は瞬間的に立ち上がり、控えの舎人らに叫びながらその袖や裳裾を翻して広間を後にする。
何故気付かなかったのか──御霊祭の夜もそうだった。伍名は大叔父である月読と会い、何か言葉を交わしていた。そして大叔父もまた、神依について──語った。
しかし今の日嗣には、伍名にそれを問う時間すら惜しい。瞬きで自分をどこへでも導いてくれる神を呼び、怒号にも似た逼迫した声を上げる。
やがてそれはぷつりと途絶えて……そこでようやく、伍名は顔を上げた。
再び静まり返って無となった空間は、日嗣のもたらした熱さえ冷まし、また初冬の朝の空気をもたらす。
そこに落ちる、小さな溜め息。
「……私は本当に、……優しくない」
伍名は空の上座を見つめ、自身もゆっくりと立ち上がる。
……優しいだとか、穏やかだとか、今となってはそう顕してくれた神依や禊に申し訳なささえ感じる程だったが……しかし、これは仕方のないことでもあった。
「日嗣ぎ」は「只人」ではない。天孫という「公」の肩書きを背負い、その証たる勾玉、剣を提げ、玉の衣(ころも)を纏っている。
何故気付かなかったのか──御霊祭の夜もそうだった。伍名は大叔父である月読と会い、何か言葉を交わしていた。そして大叔父もまた、神依について──語った。
しかし今の日嗣には、伍名にそれを問う時間すら惜しい。瞬きで自分をどこへでも導いてくれる神を呼び、怒号にも似た逼迫した声を上げる。
やがてそれはぷつりと途絶えて……そこでようやく、伍名は顔を上げた。
再び静まり返って無となった空間は、日嗣のもたらした熱さえ冷まし、また初冬の朝の空気をもたらす。
そこに落ちる、小さな溜め息。
「……私は本当に、……優しくない」
伍名は空の上座を見つめ、自身もゆっくりと立ち上がる。
……優しいだとか、穏やかだとか、今となってはそう顕してくれた神依や禊に申し訳なささえ感じる程だったが……しかし、これは仕方のないことでもあった。
「日嗣ぎ」は「只人」ではない。天孫という「公」の肩書きを背負い、その証たる勾玉、剣を提げ、玉の衣(ころも)を纏っている。

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