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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第14章 墨染めの恋
 ならば後は……自身自身の決断だけ。
 その従者達をも受け入れ、この荒んだ神たる魂を、あの少女に委ねる意思さえあれば。過去を受け入れ、再び……恋に、愛に向き合う覚悟さえ持てるならば。
(俺は……満たされる)
──と、そこまで思って日嗣は不可解な違和感に襲われた。
 「…………?」
今、何か……もっと重要なことを、この神は述べていなかっただろうか、と直感が働く。
 それが何なのかは分からない。だがそれは、今よりも若い頃から日嗣に課せられていた「権力」という力がもたらす……危機察知、危険回避の勘でもあった。
 頭の中を染める、刃をかわす瞬間のようなひやりとした感覚。言葉端のそれを見逃してはいけない気がして、その感覚を信じて考えろと本能が告げる。
 (……あの夢)
その冷えた思考の中で真っ先に甦ったのは、あの夢。
 禊が向かった先の世界は一瞬の内に夜の帳(とばり)に包まれて……その深黒の世界に向かう後ろ姿は、いつの間にか神依のものに変わっていた。
 神依は今や、清廉な水の神威と、国津神たる伍名の土の神威を宿していて……
 水が張られた田にはいずれ、美しき月が映る。
 月。
「──ッ……彦! 彦を呼べ!! 淡島に降りる!!」
「……」
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