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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第14章 墨染めの恋
……その言葉が語られるやいなや、日嗣の脳裏にあの──御霊祭の日、美しく着飾り化粧を施された神依の姿が浮かんだ。
折り重なった真白の薄衣(うすぎぬ)、金の装飾、輝石の玉緒。それは、まるで……契る式日の、装いにも似て。
その余りに突然の申し出に、日嗣は大きく息を吸い、そのまま言葉にすることもできず、呑み込むように手で口元を押さえる。
──天津神八百万を統べる天照からその“日嗣ぎ”の地位を許された自分に捧げられる……国津神八百万を統べる男神の娘。
……あらゆる貢ぎ物の中央に在ってたおやかに佇むそれは、余りにも……。
(だから──か。だから、あの禊も……)
変わったのだ。
もう雨の中、水溜まりに衣を浸しうつむいていた時とは違う。
伍名があの従僕達とどんな言葉を交わしたかはしれないが、しかしそれであの禊は流れ、再び日嗣の目の前に姿を見せた。そしてあれ程までに美しく在れたのなら……おそらく、その男の好ましい形で、その膿んだ恋を看取ることができたのだ。
それどころか、神の前とて臆すことなく、ただ一人の男として在れるような──新しい恋に昇華して。
傘を捧げてくれたように、その恋を……今度は、譲ってくれた。
折り重なった真白の薄衣(うすぎぬ)、金の装飾、輝石の玉緒。それは、まるで……契る式日の、装いにも似て。
その余りに突然の申し出に、日嗣は大きく息を吸い、そのまま言葉にすることもできず、呑み込むように手で口元を押さえる。
──天津神八百万を統べる天照からその“日嗣ぎ”の地位を許された自分に捧げられる……国津神八百万を統べる男神の娘。
……あらゆる貢ぎ物の中央に在ってたおやかに佇むそれは、余りにも……。
(だから──か。だから、あの禊も……)
変わったのだ。
もう雨の中、水溜まりに衣を浸しうつむいていた時とは違う。
伍名があの従僕達とどんな言葉を交わしたかはしれないが、しかしそれであの禊は流れ、再び日嗣の目の前に姿を見せた。そしてあれ程までに美しく在れたのなら……おそらく、その男の好ましい形で、その膿んだ恋を看取ることができたのだ。
それどころか、神の前とて臆すことなく、ただ一人の男として在れるような──新しい恋に昇華して。
傘を捧げてくれたように、その恋を……今度は、譲ってくれた。

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