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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第14章 墨染めの恋
 そこで日嗣は何かを言いかけて、しかしそれ以上の言葉を発することはできなかった。それは目の前の男神によって、本当に──ただただ静かに差し止められられてしまった。
 「いつ……な……」
「……」
先程、みっともなく崩れ落ちるように座した自分よりも……なお深く深く頭を垂れ、額を畳に付ける国津神の長。それを前に、何故だか日嗣は身動き一つ取れなくなってしまった。睨まれている訳でも、見下ろされている訳でもない。なのに眼前からは圧倒されるような何かが感じられて……。
 その金縛りのような心地は──強いて上げるなら、未知の、未来への予感と恐怖だった。
 今までにないことが語られる予感。吉兆。そしてそれに足踏みするような──得体のしれない実体の無い恐怖。凶兆。
 不意に、りん、と涼やかな、音ならぬ音が日嗣の耳に届く。
 指先が知らず知らず胸元の玉飾りを弄び、またその奥にあるもののざわめきを感じて、探るように衣ごと握りしめる。
 そして伍名もまた、それを合図にするように──
「……昨晩、わだかまって淀となった水は流れ、貴方様が潤うための土壌も整いました」
──今度こそ、新たな縁を結ぶ言葉を続けた。
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