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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第14章 墨染めの恋
「……あの子はとても、いい子でした。今まで甘い言葉の一つも含ませてもらえなかったのか、いちいち私の言葉に反応するのも楽しくて。少し意地の悪い言い方をすれば頬を染めてうつむいてしまうような、初(うぶ)な娘でした」
「やめろ……」
「ちょうど湯上がりで、髪もしっとりと水気を含んでとても美しかった。肌も、その全てに頬紅を差したかのように淡く色付いておりました。……貴方様の朱印も見受けられましたが、その肌に舞わせる花弁も負けず劣らず鮮やかに翻って。そして──貴方様はその身を何処(いずこ)までその黄金の瞳に映されたのでしょう。私達男が世界で最も丁重に扱い、最も慈しみ、最も愛さなければならないその秘された女の園は、可愛らしい桃の色をして……天酒の如く、甘い露を満たしておりました」
「……黙れ……」
「……」
ふと楽になった胸元に伍名が目を遣れば、荒々しく衣を鷲掴んでいたはずの手が少しずつ力を失い、離れていくのが見えた。
 伍名の言葉と共に項垂れていく日嗣は、ただ伍名の言葉通りの光景を思い描いて、それが真実なのだと思い込んで、怒りも憤りも全てを絶望に変えて、それに呑み込まれてしまっていた。
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