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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第14章 墨染めの恋
 それはざわざわと騒ぎ出し、八方から刃を突き出すように伍名を取り囲む。
 天照、月読、そして素戔鳴と……そのいずれをも知る伍名は、一気に荒びた若き神の魂にその血の暴威を垣間見て苦々しく笑んだ。自らも神として在らねば身くらいは弾き飛ばされてしまいそうな、圧倒的に暴力染みた神気でもってなされる威嚇。それを隠さないのは若さ故とも言えるが、ただ……それでも伍名は少しだけ、嬉しいような安堵したような、不思議と穏やかな気持ちを心の片隅に保つことができた。
 あの一言でこうも有り様を変えるほど、この青き苗の神は今日まであの子を慈しんでくれていたのだ。そしてそれを、少女がはにかんで語ることができるくらい……大切に、穏やかに、優しいままに。この力に任せ無理矢理に組み伏せるでもなく、傷付けるでもなく、ただ寄り添うに留め、在ってくれたのだ。それだけは……純粋に、ありがたい。
 日嗣は髪に、袖に、裳裾にその怒気を孕み乱雑に立ち上がると、伍名の胸ぐらを引っ掴んだ。突き出される空気の刃が喉元を抑えるように狭まり、しかし伍名はそれにも動じず、ただ真っ向から日嗣を見返す。
 「衣に、花の残り香でも致しますか」
「貴様……!」
日嗣はそれになお苛立ちを強め、唸る。
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