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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第14章 墨染めの恋
 まだ鮮やかな色を伴って、脳裏に先程の夢が甦る。何も知らないまま暗闇に呑み込まれていく神依の姿は、またドクリと日嗣の心臓を不安に揺らした。
 本当はこんな無駄話をしている間も無く、すぐに淡島に降りたかった。しかし相手が相手なだけに、面倒とは思えどないがしろにもできない。
 だがそんなふうに感じてしまうのはやはり、目の前の男が言うように──長く、逃げ過ぎたからかもしれなかった。
 こうして訪れる者を見下ろし豪勢な衣装で取り繕うより、軽い衣を纏って日がな一日釣れぬ糸を垂らして語らったり、あの秘密の場所で子供達に混じって棒を振り回している方が楽しい。控える男に多少の罪悪感はあったけれども──神依と並んで気楽に座し、その子供らに言い付けられて赤ん坊のおもりをして、素朴な駄菓子を摘まんで、鬼事(おにごと)やかくれんぼを眺めている方が幸せだった。昔の自分ができなかったこと、してやれなかったこと。
 それは事情を知る者にはとても浅はかで薄情に見えたかもしれない。しかし神依はそれを責めることも嘲ることも、ましてや哀れみを掛けることもしなかった。
 だが今は、猿彦はともかく、伍名に神依のことを話しても仕方がない。
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