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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第14章 墨染めの恋
 高座に座す日嗣は、早朝だというのにきっちりと髪を結われ、まだ新しいような衣を重ね、天照に許された権力の象徴である玉飾りと剣を帯びていた。
 その姿は暗に伍名の無礼を責めるものではあったがそれよりも、伍名が先程この部屋に足りないと思ったもの全てが凝縮されているようで少し可笑しかった。
 いつものように穏やかに笑む伍名に、反面、日嗣は憮然として応える。
「──誰のせいだと思っている。これでも近習を振り切って来たんだぞ。奴らはあと十の装具と五の衣を持って、半刻待たせろと言っていた」
「悪い友をお持ちになって常が奔放でいらっしゃるので、こういう時こそ格式張ろうと方々も必死なのでしょう」
「それはもう御霊祭で果たした。……ついでに、彦にはいつも世話になっている。だが──今はそれよりも、早く用件を済ませてくれないか。俺も……少し、急いでいるんだ」
「……?」
そこでふと表情を曇らせた日嗣に、伍名は小首を傾げる。冗談半分で言葉を交わしていたはずが、眉を寄せ、うつむくように目を伏せるその姿は本当に焦っているように見えた。
「どうかなさいましたか」
「……いや。……夢見が悪かっただけだ」
伍名が問えば、日嗣はそれだけ告げた。
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