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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第14章 墨染めの恋
「……知ってる。でも……割り切れねえもんはあるよな」
「……そうだな。あの三人は皆が皆身勝手に優しく、だからとても心が柔かった。必要以上に傷付いてしまわないか、それだけが心配だ。だが……御令孫も、同じようにその痛みを知らなければならない。鎌が入らなければ、稲は刈れないのだから」
「……」
猿彦が黙して答えたところで、こちらに近付いてくる数人の足音が伍名の耳に届く。
「行きなさい。どうせすぐに呼ばれる」
「……しゃあねえな」
猿彦が立ち上がるのを確認すると、伍名もまた居住まいを正し丁寧に頭を垂れる。するとすぐに早い足音が室内に入ってきて、それと共に「構わぬ」と短く告げられた。
 猿彦の姿はもう消えていた。
 待ち人──日嗣は何か急いでいるように思えたが、ひとまずはその言葉通り面を上げ、視線で人払いを申し出る。しかし当の本人はそれすらわきまえていたように、伍名と視線を交わす瞬きの間も無く舎人らに下がるよう手振りで示した。
 そして威厳の欠片も無いほどぞんざいに座すと、鬱陶しそうに伍名に目を留める。
「こんな時間に何用だ」
「無礼は承知の上でございます。それにしても……御令孫におかれましては、早朝からお気の毒に」
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