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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第14章 墨染めの恋
 人が善と悪の心を持つように、いずれの神にも荒(あら)と和(にぎ)の二つの性質を含んだ魂が宿るが、その二つが極端に際立つ神。
 それが少女の元へ降った時どんな事態をもたらすか、伍名かて頭では理解しているつもりだった。ただ、実際に会って言葉を交わしてしまうと情が生まれる。既に自らも、禊という存在を使って同等のことを仕出かしたというのに……その無事を願わずにはいられない。
(薄情なものだ)
自嘲もするがしかし、しょせん神とはそういうものだった。何もかも万能ではない。だからこそ、人と寄り添わなければ存在できない。神様なんていない。たったそれだけの言葉を連ねられれば消えてしまう存在。
 けれども確かに、伍名の元にも新しい想いの欠片が届いていた。きっとあの子が進貢で花を捧げてくれたのだろうと、知らず知らずそれを抱くように自身の手が目の前の空気に差し上げられる。
 形無きその信仰はまだ頼りなく、小さなもの。けれどその分、柔らかくて温かい。そしてその手と腕の形は、あるものを抱くに、もう伍名には散々覚えがあるものだった。
 (……赤子)
そういえば彼女は最初、実際の歳より少し幼く見えた。まだこちらの世界に染まりきっておらず、その無知ゆえか。
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