この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第13章 月の剣
「あれは確かに桜の名を戴き、それに相応しい姿をしていた。しかし爛漫に、繚乱に咲き乱れるは何も花ばかりではない。燃え上がる炎もまた、火の粉という花弁を散らし桜雲のように山を彩る。……分かるな?」
「まさか……か、火山の神様……?」
「そう。故にあれは火の中で子を生んだのだ。しかし日嗣は稲穂の神だぞ。──合う訳が無かろう。それは姿に惑わされ、魂を見抜けなかった日嗣の咎だ。そして今も見抜けずにあるからこそ、山ではなく偽りの産屋の火にまかれ自らの魂を焼いておる。
……だが火山はまた、美しく清らかな水を生み出す。それがようやく、ようやくこの淡島に流れ着いた。餓えた日嗣自身が求め、引き揚げた。これを運命と呼ばずに何と呼ぶ」
「あなたも……そうなのですか?」
神依は、今度こそ……その神の魂に日嗣と似たものを見つけ、正面からその瞳を見据えた。日嗣と同じ、孤独な光を宿す瞳。
問えば月読はなお優しく神依を抱き、その髪に、額に、瞼に唇を捧げ紡いだ。
「……ああ、そうだ。私に与えられ私が司するあの月の光かて、望月と新月という死生の環(わ)を廻るというのに……共に生まれた姉上でさえ、父を慕い死の穢れを嫌って常若(とこわか)の生を望み、私を心から理解して下さらない」
「まさか……か、火山の神様……?」
「そう。故にあれは火の中で子を生んだのだ。しかし日嗣は稲穂の神だぞ。──合う訳が無かろう。それは姿に惑わされ、魂を見抜けなかった日嗣の咎だ。そして今も見抜けずにあるからこそ、山ではなく偽りの産屋の火にまかれ自らの魂を焼いておる。
……だが火山はまた、美しく清らかな水を生み出す。それがようやく、ようやくこの淡島に流れ着いた。餓えた日嗣自身が求め、引き揚げた。これを運命と呼ばずに何と呼ぶ」
「あなたも……そうなのですか?」
神依は、今度こそ……その神の魂に日嗣と似たものを見つけ、正面からその瞳を見据えた。日嗣と同じ、孤独な光を宿す瞳。
問えば月読はなお優しく神依を抱き、その髪に、額に、瞼に唇を捧げ紡いだ。
「……ああ、そうだ。私に与えられ私が司するあの月の光かて、望月と新月という死生の環(わ)を廻るというのに……共に生まれた姉上でさえ、父を慕い死の穢れを嫌って常若(とこわか)の生を望み、私を心から理解して下さらない」

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


