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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第13章 月の剣
 ……その日嗣にまとわりつく罪禍の物語は、高天原はもちろん、おそらく淡島でも禁忌として避けて遠ざけられるべき話の一つだった。
 今となってはむしろ時が経ち過ぎて、忘却の彼方へ押しやられようともしている話ではあるが……その当の本人である日嗣がずるずると今日まで引きずるものだから、姉を含む一部の神々からはその忘却を慶び、切に望まれている話。
 それを何故、こちらに来てから日も浅く、塵にまで貶めたはずの娘が知っているのか……。
 月読は怪訝そうに眉をひそめると、神依の元に向かい問う。
「……お前が……何故それを? あの僕でなければ……猿彦か、伍名か」
「……違います」
「ではどこで、誰から聞いた?」
「聞いてない……」
聞いたのではなく──
「……視た、のです」
「……あり得ぬ」
「本当です……、でも……、それでも、私は……」
「……」
「……とめられなかった。悲しくて……怖かったけど。今もそれは……変わらないけど」
「……」
「それでも……“お母さん”が教えてくれたから。……あなたのお父さんが……あなたが、知らないものを……お母さんは、……うえッ……」
そこまで言い掛け、神依は目眩に目をつむり、酒と胃液の混ざったような水を吐き出す。
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