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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第13章 月の剣
 でも、それならせめて……あの甘やかな時間を確かに過ごしたのだという証だけは手元に残したかった。例え日嗣に不似合いな、舌を突き出すだけの四つ足の獣に貶められたとしても……せめて浅ましい性のひとかけらの純な部分で、思い出として胸に抱くことだけでも許してもらいたかった。

 「……失礼致します」
その時、廊下から静かに声が掛けられる。禊が酒を持って戻ったようだった。

***

 「……」
禊が襖を開けると神依は相変わらず神の前に突っ伏していた。ただ先程と異なるのは、泣いているだけではなく意思を持って何かを乞うているように見えたこと。
 そして横になっていたはずの童が苦しそうに座して唇を噛んでおり、何かがあったことだけは分かった。酒の準備をしている間も、少し物音がしていた。
 「……」
禊は無言のままに廊下で一度礼を取り、瓶子と盃の乗った盆を神の元へ捧げに進む。振る舞いはどうあれ相手は高天原第二位の神。位を考えても、主への仕打ちを考えても、無礼を働く訳にはいかない。酒も器も、特上のものを用意した。
 「お注ぎ致します」
「構わぬ……下がれ」
「……はい」
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