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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第13章 月の剣
神依は指をつき直し、なお深く深く頭を下げる。
 そのつげ櫛だけは、何をしてでも取り返したかった。今こうしている間にさえ、ぱきりと壊されてしまいそうで怖い。
 (日嗣様……)
そしてその姿をあの特別な時間と共に思い浮かべれば、じわりと涙が浮かんだ。恐怖や痛みに怯え流すものとは違う、熱を持った涙。
 伍名の洗礼を受け、今度会うときは今までとは少し違ったふうになるとは分かっていた。それでも事情に明るい禊がいるし、言わなければならないことも、言わなくていいことも、全てひっくるめて受け入れてもらえる気がした。そんな……不思議な確信があった。
 今までのように、同じ時を過ごすだけでは埋まらなかったものを、伍名が与えてくれた気がした。
 けれどこれはどうだろう。この神に頭を下げれば下げるほど、自分がどんどん汚されていく気がする。日嗣に受け入れてもらえなくなる気がする。
 その明確な理由も根拠も無かったが、神依の心には暴力や陵辱の恐怖に混じって別の怖さが渦巻いていた。
(ごめんなさい……、……ごめんなさい、日嗣様……)
こんな私でも許してくれるだろうか──そう思えばますます、それどころか急激に、日嗣との距離が開いてしまった気さえした。
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