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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第13章 月の剣
「あ……ああっ……!」
それを見た神依は、何故それを月読が持っているのか驚愕と絶望の混じった声を漏らし、ただその一点だけを凝視した。
 「それ」はある意味、神依と日嗣が自らの意思で結んだ初めての絆の証だった。お互いにまだどうしていいのか分からず、不器用なままに紡がれた絆ではあったけれど──
 月読は神依がそれを認識するのを待ち、まさしく餌とばかりに「それ」で神依の鼻先をぺたぺたと打つ。
 この燻った空気の中でも決して濁らない木の香り。可愛らしい小菊の彫刻に、繊細な歯と──。月読がつまみ上げひらひらと弄ぶそれは──初めて日嗣から神依に贈られた、あのつげ櫛だった。
 今しがた髪を結われた記憶の中にその感触を見付けた神依は、慌ててそれに手を伸ばす。
「返して──返して下さい、それは……! ──あぅっ!」
櫛を取り返そうと慌てて手を伸ばす神依に、月読はそれを遠ざけ力任せに神依の頬を打つと、そのまま畳に打ち捨てる。
 先に散乱していた厚みのある道具の何かがおかしな角度で体に当たり、神依は痛みに小さく呻いてその痛みをごまかすように身を丸めた。
 「姉ちゃ……、」
同じように伏していた童が体を起こし、泣きじゃくる神依に手を伸ばし支える。
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