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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第13章 月の剣
 それどころか、できるならそのまま眠ってやって欲しかった。神の目には一片の慈悲慈愛の欠片も感じられない。これから起こる、予想し得る限り主に与えられる暴虐の数々を見せたくなかった。その溢れる涙を、喉を裂くような叫びを、知らないままでいてやって欲しかった。
 だが視線も寄越さぬ神は、そんな儚い願いすら嘲笑うかのように薄ら笑い、こともあろうに足を伸ばしその指先で伏せる神依の顎を持ち上げた。
 「……っ」
そこで初めてその神の姿を目の当たりにした神依は、その余りの無慈悲さに心臓をわしづかみされたような心地になった。
 あの、原初の男神から生まれた三柱の神の中子。朝の光から隔離され、行灯の淡い緋色に照らされるその男神は──日嗣によく似ていた。髪や衣こそ白や蒼の、それこそ月の様相をしていたが……今はその灯の色が混じり、本当に日嗣そっくりだった。
 「……誰ぞ、別の男の顔でも描いたか……所詮お前も浅ましき淡島の巫女よ。だがその平身低頭、殊勝な態度は嫌いではないぞ……。せいぜい私の気分を害さぬよう、媚びて回るといい」
「……っは、……はい」
眉を下げ、瞳を震わせた少女に月読はふんと軽く笑う。
 伍名がもたらしたそれは、確かに暇潰し程度にはなりそうな玩具だった。
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