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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第13章 月の剣
「禊……あっち」
「……お下がりを」
神依がそちらを示せば、禊は自身の背に神依を庇い廊下を進む。
 そして中を窺うように閉ざされた襖を開けた瞬間、
「──!!」
その姿に、存在に、驚愕したように目を見開くと、そのまま唖然としたように、
「つ……月読命(ツクヨミノミコト)、様……?」
その名を呼んだ。



【2】

 禊がこうしてその神にまみえるのは、初めてのことだった。かつて洞主に仕えていたその時にさえ、褥の上の姿など見たことがない。
 しかし時折ふらりと淡島に降りてくるその神の風貌は、淡島の者ならばもう誰もが見知っている。その名も、もはやそれ自体に力があり、隠すのも億劫になっているようで堂々と晒している数少ない神。
 そして目の前に広がるのは、まさにその名に相応しい──今が朝か夜か分からなくなりそうな、時の歪んだ光景だった。
 閉めきられた部屋を灯すのは冬花の透かしが入れられた行灯の灯火だけ。更にその隣には、燻(いぶ)すように桜色の香が詰められた香炉が置かれ……また神自身が座す褥の周りには、“一応”用意されている、巫女を責め立てる道具や薬の数々が散乱していた。
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