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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第13章 月の剣
「……雨戸を開けます。神依様はそのまま布で鼻と口を抑えて、なるべく静かに呼吸なさって下さい。この匂いは……媚薬です」
「び……媚薬?」
「私や一ノ弟は耐性がありますので貴女よりは……大事ありません。よろしいですね?」
「ん……」
神依は浮かんでくる涙を拭って頷く。
その禊の言葉に言葉以上の願いが含まれていることに気付き、だから神依もまた、泣いているわけにはいかなかった。
禊が雨戸に手を掛ける。
立て付けの良くない雨戸を動かすには、ちょっとしたコツが要ると神依は知っている。きっと童が閉めたのだろう、だから大丈夫だと根拠の無い安心感で冷静さを保ち、それを見守った。
そしてガタリと音を立てて雨戸が引かれると、布越しにも濃厚な甘ったるい香りがむわっと溢れる。空気さえ毒の花の色が滲んでいるようで、二人はそれに顔をしかめ縁に上がった。
途中途中で空気の流れを作るよう禊があちこちを開け放てば、透明な空気がふわっと流れる。神依はその間ずっと、ある方角だけを見つめていた。
「……」
それは昨晩、伍名を招いた神だけに許された部屋。つまりは──元々夜伽用に宛がわれた部屋なのだが、臭いはそちらから流れているような気がした。
「び……媚薬?」
「私や一ノ弟は耐性がありますので貴女よりは……大事ありません。よろしいですね?」
「ん……」
神依は浮かんでくる涙を拭って頷く。
その禊の言葉に言葉以上の願いが含まれていることに気付き、だから神依もまた、泣いているわけにはいかなかった。
禊が雨戸に手を掛ける。
立て付けの良くない雨戸を動かすには、ちょっとしたコツが要ると神依は知っている。きっと童が閉めたのだろう、だから大丈夫だと根拠の無い安心感で冷静さを保ち、それを見守った。
そしてガタリと音を立てて雨戸が引かれると、布越しにも濃厚な甘ったるい香りがむわっと溢れる。空気さえ毒の花の色が滲んでいるようで、二人はそれに顔をしかめ縁に上がった。
途中途中で空気の流れを作るよう禊があちこちを開け放てば、透明な空気がふわっと流れる。神依はその間ずっと、ある方角だけを見つめていた。
「……」
それは昨晩、伍名を招いた神だけに許された部屋。つまりは──元々夜伽用に宛がわれた部屋なのだが、臭いはそちらから流れているような気がした。

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