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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第13章 月の剣
思わず後退れば次は後ろに、後ろを振り向けば次は傍らに。
「禊……!!」
「こちらへ!」
避けれる方へ避けれる方へと足を進めるが、二人はじりじりと家屋の方へと圧し遣られていく。ついには雨戸に背が付き、それはまさしく、蜘蛛がてぐすね引いて獲物を待ち構えているような──そんなじわじわと襲い来る恐怖に、神依は手巾を握りしめたまま「女神様」と呟いた。
 神依の知る限り、ここにそんなことができる神はあの蜘蛛の女神一柱しかいない。
 屋敷神の祠も壊され、小さな鼠神の安否も分からない。中には自分達の帰りを待つ童や子龍がいるはずだったのに、彼らがどうなっているか、想像すれば悪いことばかりが頭に浮かんで……乱雑な風が吹いたように、ざあっと血の気が引いていくのを感じた。
 そしてその暴挙を為した何者かは間違いなく、自分達を家の中へ導こうとしている。
 どこかに抜けられるような道はないか、一縷(いちる)の希望を胸に禊が門の方を見れば、巣の重なりの向こうで兎神がうろうろしているのが見えた。しかし島から出られぬ幼き神に、できることは何も無い。
 「禊……」
心細そうな声が胸元から聞こえる。禊自身はそれをよすがに、理性と冷静さを保ち続けた。
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