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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第13章 月の剣
しかしそこで表情を変えた禊に、神依ははっと我に返る。
「なりません。それより、大兄に乞うてくれた方が然るべき人員を回してもらえます」
「ん……、わかった……」
 自分には、純粋に物理的な力も無ければ人智を越えた力も無い。ただ駆けるための足はあるから、我儘を言って禊の足手まといになるよりは、駆けて駆けて一刻も早く助けとなった方がいい。
「……無茶だけはしないで」
「はい」
そうして二人は短く言葉を交わし、神依は門へ、禊は雨戸の方へと走った。
 だがその刹那、
「──あっ!?」
「!?」
まるでそれを見計らったかのように空気が一瞬で赤黒く変わり、神依の行く手を阻むよう門に巨大な蜘蛛の巣が張った。
「神依様!」
勢いに足を取られて転けそうになる神依に、禊が慌てて駆け寄って手を伸ばす。
 禊は神依を支えながら、一人その異様な空間に様変わりした庭を見回した。まるで日蝕(ひは)みが起きたかのような、うっすらと透明感を帯びた赤黒い空気。そこに白々と浮かぶ蜘蛛の巣は、あの御霊祭の日に見た──
 そう思った瞬間、更に角度を変えて再び巨大な蜘蛛の巣が二人の眼前を覆った。それは布がはためくような音を伴って、瞬きの間に二人の周囲に張り巡らされていく。
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