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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第13章 月の剣
「どうしたんだろう……怪我が痛むのかな? でもそれなら、鼠軼様が教えてくれるだろうし」
「……申し訳ありません神依様……少々、お待ちを」
不安そうに呟く神依に、禊は兎神を通り越して先に進む。
 神依を一人置き去りにすることも憚られたが、兎神の様子からしておそらくは家の方で何かあったのだろう。
 そして禊は竹林の小路を走り抜け、門をくぐり抜けたところでようやく──何かほんのりと、甘い匂いが漂っているのを感じた。
(これは……)
それが何であるのかすぐに察した禊は、慌てて玄関の引き戸に手を掛ける。開かない。仕方なくそのまま庭へ回れば、一度は開けたはずの雨戸が全て締め切られ家中の空気が密閉されていた。
 そしてその木戸や玻璃の隙間から少しずつ少しずつ漏れたのだろう甘い匂いは……あの選定の晩に使ったものと同じ、焚いて使う類いの媚薬の匂い。
 「み……禊!!」
「神依様──」
不意に背後でした主の驚愕の声に振り向けば、神依は真っ青になってある一点を指さしている。
「……ッ!」
付いてきてしまったことを咎める前にその指の先を追えば、庭の片隅……梅の木の前にあった屋敷神の祠が、無惨にも斜(はす)に、一直線に斬り裂かれていた。
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