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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第13章 月の剣
まだ触らせてはもらえないかと、神依はそのふかふかの毛を見て残念に思ったが、出会ったばかりの昨日今日では仕方ない。所々かさぶたで乱れてはいたが……全てが生え揃えば、きっとあの綿よりももっともっと柔らかいに違いなかった。
 「朝焼けの、薄い雲みたいですね」
「そうじゃな、昔は夏の入道のように白かったんじゃが──さて、いいかな神依」
「はい」
鼠軼は長い髭を整えながら、改めて語り始める。
 「因幡兎に取ってあれを渡ることは、少々特別な意味を持つ。そしてそれには、お主の何倍もの度胸が必要になってくる。そこに体の大きさはあまり関係ない。なんせ因幡兎はよう跳ねる。あの程度の石を渡るに不自由は無いじゃろ」
「……つまりそれができないこの兎神様の方が悪いと? ……それで苛められていたのですか?」
「そういうことらしいのう。弱虫じゃ意気地無しじゃと除けられておったようじゃが、しかしの、神依。本来これら因幡兎の優れたるは、向こう見ずな度胸ではなく知恵の方じゃ。それは他の兎が持たぬ特別なもの。加えて、跳び石が怖くて渡れぬというのは、ある意味最も濃くその賢き始祖の血を引いておるとも言える。その話はまた追々致すが、一つ言えることは──」
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