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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第12章 天津水
「──…!?」
日嗣はまたもや一変したその景色に、
「──神依……!!」
焦燥と共にその名を呼んで、目を覚ました。

***

 薄暗い室内。殺風景な部屋。
 日嗣はそこが、高天原の私宮であることを思い出して──しかし得体の知れない恐怖に包まれたまま、体を起こした。
 (今のは……)
 空気はひんやりと冷たいもののはずなのに、汗が額に滲んでいた。嫌な汗。
 それを拭おうと目を閉じれば、瞼の裏に先程の夢の情景が浮かぶ。
 ……青年が向かった先の世界は、一瞬の内に夜の帳(とばり)に包まれて……その深黒の世界に向かう後ろ姿は、いつの間にか神依のものになっていた。
 奈落に呑み込まれていく少女を留めようと、声を上げたのに間に合わない。闇は裂かれた繭玉のように不揃いな黒糸となり、その糸は蛭のようにうねって神依にまとわりつき……しかし神依はそれに気付かぬまま、ゆっくり、ゆっくりとその身を蟲の塊に浸していく。
 (……神依……)
これは恐らく、ただの夢ではない。すぐに淡島に降りた方がいい。
 そう感じて急ぎ布団を除ければ、日嗣が目覚めたことに気付いた控えの小舎人(こどねり)が障子の向こうに姿を見せた。
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