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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第12章 天津水
しかし、
「──日嗣様」
その刹那、あり得ないことが起こって日嗣はその進みかけた足を止めた。
(今のは……何だ?)
こんなことは……あの時にはなかった。
あの時は、そこで別れて終わりだったはずなのに……不意に背後から、その青年の声で“名”を呼ばれて……日嗣は訳も分からず振り返った。今までどの“禊”にだってそれをされたことは無かったのに、何故ここでそれをされたのか、確かめたかった。
「──…!」
そして振り返った先の景色に目を眩ませ、日嗣は思わず息を呑む。
雲の隙間から何本も射す光の筋。
それが辺りの水滴をきらきらと照らし、青年を白く染め上げていた。澄んだ空気の向こうには、空も緑も瑞々しく──ただ一人、たった一人のその青年の飾らぬ美しさを際立たせる。
お天気雨だった。
その色はあの、御霊祭の終わりのようで──日嗣は時間が混ざったその空間で、ようやく、初めてその青年と向き合った。
「……ご無礼とは思えど、今日はあの雨の日にお伝えしたことを改めさせていただきたく、ここに参りました」
「……」
青年は、今や背後に侍らす空と同じように晴れやかな顔をしていた。そして傘を持っていたはずの手にはいつの間にか一筋の稲穂が握られ、見覚えの無い紐飾りが結ばれている。
「──日嗣様」
その刹那、あり得ないことが起こって日嗣はその進みかけた足を止めた。
(今のは……何だ?)
こんなことは……あの時にはなかった。
あの時は、そこで別れて終わりだったはずなのに……不意に背後から、その青年の声で“名”を呼ばれて……日嗣は訳も分からず振り返った。今までどの“禊”にだってそれをされたことは無かったのに、何故ここでそれをされたのか、確かめたかった。
「──…!」
そして振り返った先の景色に目を眩ませ、日嗣は思わず息を呑む。
雲の隙間から何本も射す光の筋。
それが辺りの水滴をきらきらと照らし、青年を白く染め上げていた。澄んだ空気の向こうには、空も緑も瑞々しく──ただ一人、たった一人のその青年の飾らぬ美しさを際立たせる。
お天気雨だった。
その色はあの、御霊祭の終わりのようで──日嗣は時間が混ざったその空間で、ようやく、初めてその青年と向き合った。
「……ご無礼とは思えど、今日はあの雨の日にお伝えしたことを改めさせていただきたく、ここに参りました」
「……」
青年は、今や背後に侍らす空と同じように晴れやかな顔をしていた。そして傘を持っていたはずの手にはいつの間にか一筋の稲穂が握られ、見覚えの無い紐飾りが結ばれている。

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