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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第12章 天津水
禊は答えない。けれどもその心境は容易く想像できた。
──この禊は、もう諦めているのだ。
“天孫”たる自分に臆したか、立ち向かう気概も無く、顔を伏せてはその心を閉ざしていく。
「……」
日嗣が傘を取れば、禊は立ち上がり深く深く頭を下げた。そして……一度も目を合わせることなく、踵を返す。
「──お前は本当に、それでいいのか。俺の想いこそまだ、お前のものに及ばぬというのに──お前は本当に、それでもいいのか!」
「……」
返事は無い。それどころか、立ち止まる素振りも無く来た道を戻っていく。
(……馬鹿者が)
日嗣はそれを見送り、苦々しく手にした傘を見つめる。いっそ目の前に立ちはだかって、胸ぐらを掴んで責め立てられた方がどんなに楽だったか知れない。
それでも……その青年は、日嗣が欲しかったもの全てを無償で与えてくれた。日嗣を日嗣として顕し、己が最も大切に想うものを日嗣にゆだねてくれた。
……その痛々しいほどの優しさを、これ以上つまらぬ悪意に蹂躙されたくはなかった。
だからこそ、日嗣は傘と共に託された想いを得て神楽殿へと足を向ける。肩に登っていた子龍はきょろきょろと二人を見比べていた。
──この禊は、もう諦めているのだ。
“天孫”たる自分に臆したか、立ち向かう気概も無く、顔を伏せてはその心を閉ざしていく。
「……」
日嗣が傘を取れば、禊は立ち上がり深く深く頭を下げた。そして……一度も目を合わせることなく、踵を返す。
「──お前は本当に、それでいいのか。俺の想いこそまだ、お前のものに及ばぬというのに──お前は本当に、それでもいいのか!」
「……」
返事は無い。それどころか、立ち止まる素振りも無く来た道を戻っていく。
(……馬鹿者が)
日嗣はそれを見送り、苦々しく手にした傘を見つめる。いっそ目の前に立ちはだかって、胸ぐらを掴んで責め立てられた方がどんなに楽だったか知れない。
それでも……その青年は、日嗣が欲しかったもの全てを無償で与えてくれた。日嗣を日嗣として顕し、己が最も大切に想うものを日嗣にゆだねてくれた。
……その痛々しいほどの優しさを、これ以上つまらぬ悪意に蹂躙されたくはなかった。
だからこそ、日嗣は傘と共に託された想いを得て神楽殿へと足を向ける。肩に登っていた子龍はきょろきょろと二人を見比べていた。

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