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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第12章 天津水
(……俺は何故、こんなにあれを……、求めているんだろう……)
まだ、心は理解できない。
うつむけば、その先の水面には感情を殺したように無表情な面が映った。何もかもがつまらなさそうな、凝り固まった顔。しかしそれはすぐに、雨露(うろ)の波紋がかき消してくれる。
「──キュイッ」
「……?」
不意に、聞き慣れない音が日嗣の耳に小さく届いた。
弦を擦ったような、水に揺れる小舟が軋むような、そんな音。
顔を上げて音のした方を見れば、傘を差した一人の男が佇んでいる。
もう一本の傘を雨から庇うように提げて、その腕には……小さな水霊が巻き付き、肩から顔を覗かせていた。
「……」
ああ、と心から深い息が洩れる。
天が寄越してくれたのは、誰よりも少女を想い、護り、そのためなら自らの命さえ投げ出すことを厭わない……あの少女の、二番目の命。禊だった。
日嗣自身にも猿彦にも、ずっとずっと少女の無事を祈り、乞うてきた……金も、地位も、数も、何の力も持たない只人。
しかしこの禊以上に、荒ぶる神の魂を抑え、“人”としての在り方を示してくれる者も居ない気もした。
「……お前か」
「……御令孫……」
まだ、心は理解できない。
うつむけば、その先の水面には感情を殺したように無表情な面が映った。何もかもがつまらなさそうな、凝り固まった顔。しかしそれはすぐに、雨露(うろ)の波紋がかき消してくれる。
「──キュイッ」
「……?」
不意に、聞き慣れない音が日嗣の耳に小さく届いた。
弦を擦ったような、水に揺れる小舟が軋むような、そんな音。
顔を上げて音のした方を見れば、傘を差した一人の男が佇んでいる。
もう一本の傘を雨から庇うように提げて、その腕には……小さな水霊が巻き付き、肩から顔を覗かせていた。
「……」
ああ、と心から深い息が洩れる。
天が寄越してくれたのは、誰よりも少女を想い、護り、そのためなら自らの命さえ投げ出すことを厭わない……あの少女の、二番目の命。禊だった。
日嗣自身にも猿彦にも、ずっとずっと少女の無事を祈り、乞うてきた……金も、地位も、数も、何の力も持たない只人。
しかしこの禊以上に、荒ぶる神の魂を抑え、“人”としての在り方を示してくれる者も居ない気もした。
「……お前か」
「……御令孫……」

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