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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第12章 天津水
 それを告げられたあの娘は、なんと答えたのだろう。
 そして──それを告げた神は、何故自分の前に姿を現したのだろう。もしもそれを自分に唆していたのなら、もう──いいのだろうか、もう赦されるのだろうかと、灼けつく喉でそれを問いたい気持ちもある。
 自らが犯した罪に、真っ正面から挑む度量もない。身動きの取れないまま停滞した自分に与えられた、初めての──兆し。
 「……」
だがそれだけであの娘を求めるのは、余りに不誠実だった。膿んだ時間を過ごしてきた今だからこそ、それを盲目的に信じるのは間違っていると思う。
 神たる身でありながらそれを否定することに自嘲もするが、しかしそれは日嗣が思う信仰ではない。祈りの姿はもっと細やかで、心安らぐものでいい。
 「……、」
ふと、恋もそれで、よかったのではないかと頭に浮かぶ。
 ただ隣に在って互いの温かさに触れて、何かを語ったり分かち合ったり……遠くに在る時は互いを想って文をしたためたり、思い描いた姿や声に焦がれて、夢でさえ会えることを願ったり……。
 それだけでいいのに、それさえできなかった。そしてそれにさえ至らなかった自分の馬鹿さ加減と傲慢さに、また刃物のような嫌気がさす。
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