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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第12章 天津水
 静かに溜め息を吐くが、応えてくれるものは無い。
 ……本来あの水霊を祭るはずだった外の川は、時折堤を切って田畑に流れ込むような急所を持っていた。一種、自由ともいえる端神達は「治める」ことをしない。そこに、より強く、より賢い神を投じられればと──そう思っていたのだが。
 近くの村は今頃悲嘆に暮れているだろう。
(後々、分霊するしかないか……)
それには巫女は必要ないが、きっと居た方が良い影響が出るだろう、と日嗣はその少女の姿を思い出す。
 分霊ならば今回のように騒ぎ立てることもない。準備に要る人員は近隣の村々が出してくれるだろうし、楽を奏でられる者も在るだろう。いなければ自ら奏で、あれを舞わせてもいい。もっとも舞を覚えていたら、の話だが。
 「……」
何故これほどあの娘が気になるのだろう、と日嗣は自問する。
 特異な漂着のせいか、自分を求めなかったからか、不可思議な縁……あの託宣のせいか。
 けれどもそういう理由のようなものを挙げても、実は自分ではよく分からなかった。これだという確信は無かった。ただ──
 “恋を、しなさいって”
紅い瞳で告げられたそれは、確かに神の言葉だった。
 (……あれは一体、誰に向けられた言葉だったのだろう)
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