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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第12章 天津水
 どうしてだろう、今は夏だったはず──と思ったところで、見慣れた天井と景色を認識して、一気に数百年の年を重ねてしまった。
 正直、綺麗とは言い難い私室。
 自分ではどこに何があるか理解しているつもりだが、いかんせん物が多すぎる。衣類や宝飾品、それを除けば紙の束や巻物、本だったが。
 ついには寝台の上に書物を積むようになり、大弟がいた頃はよく文句を言われて片付けられた。あの子は几帳面で、大兄と違って融通が利かないところがある。添い寝の相手は選んで下さいと、悪びれることもなく私の心をえぐることもあった。
 ここに来てから、私を女として求める神など居やしないのに。ああいや、一人だけ居られたか。恋多き、国土の神。けれどそれも昔の話だ。
 その大弟も思いの外、あの愛らしい娘巫女とは上手くいっているようで安心した。まだ無邪気だった頃の私によく似た娘。だから大弟も手慣れているのか。奇妙なことはあるが、いずれ時が経てばそれも消え去るだろう。……消えるだろうか。
 「……」
「……玉衣様? お起きになりますか」
「いや……」
寝返りを打てば、その気配を察したのか既に障子の向こうに控えていた大兄が声を掛けてくる。本当に良くできた禊。
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