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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第12章 天津水
【2】

 夢を見ている。もうずっとずっと昔の夢。

***

 その日は確か、急な神事の準備に奥社は追われていた。舞や歌の稽古でもう何度も奥社に出向いていた私とそれに付き従っていた禊は、仲の良い巫女と禊に手伝って欲しいと呼び止められた。
 「──申し訳ありません、玉衣様。急に男手が必要になったとかで」
「別に構わないわ。それに奥社に入るなら、あなたも他の禊と仲良くなっておいた方がいいもの。必要とされるなら、応えておいた方が都合もいいでしょう?」
「はい。すぐに戻りますので」
 そうして二人の禊はどこかへ行ってしまう。
 その間、私達はお菓子でも食べていましょうと巫女が言うから、私はそれに何の疑いもなく付いていった。
 ──それは馬鹿で、浅はかな若い娘の時分の話。世界の何もかもが優しいものでできているのだと、まだ信じていた頃の話。
 けれど連れていかれた先は、人目につかない社の影。木立に囲まれて、聞こえるのはわんわんと耳に響く、うるさい蝉の声だけだった。
 そしてそこには何人もの巫女がいて、私はあっという間に取り囲まれた。
 「──ごめんなさい……!」
私を連れてきた巫女は、そう言いながらそそくさと立ち去ってしまう。
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