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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第12章 天津水
 本当は自分が抱きしめていたはずだったのに、それはいつしか逆転して、いつもと変わらぬ位置になっていた。
 「……そしたらさ、神依様……俺もついてって、いいかな」
「童──いいに決まってるでしょう。おいで」
 不意に、遠慮がちに挟まれた幼い声に、神依は泣き笑いのおかしな顔をして、その小さな体も抱き寄せた。童は照れ笑いを浮かべながらも、神依と禊の間に入って嬉しそうに頷く。
「一ノ兄の稼ぎだけじゃ、不安だもんな」
「……お前の食いぶちの方が高くつく」
「ふふ。──そうだ、ちょっと待ってて」
 神依は今度こそぐっと涙を拭うと、満面の笑みを浮かべて部屋の隅に置かれた小さな櫃(ひつ)へと向かった。
「神依様?」
それは禊や童も手を触れない、神依だけの宝物入れ。とはいえ、時折あの子龍がその回りをちょろちょろ走り何とか開けようと試みているので、ばらけた玉飾りやあの御霊祭の日に拾い集めた水晶が入っているのだろうと禊は思っていた。それこそきっと、その子龍が産み出した輝石もあるに違いない。
 神依は更にそこから小さな小さな紙の箱を取り出し、禊と童の前に持ってきた。禊にも見覚えのある、少し前に空けた菓子の箱。
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