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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第12章 天津水
「そして貴女はお気付きではなかったかもしれませんが……そうやって彼に応えていく度に貴女もまた、御令孫を神として、そして一人の男として見出だし、その淡いお気持ちを寄せていかれた。ならばまず巫女の幸せを願うのは、禊として当然の心の働きでしたので。
それに何より……貴女は酷く不器用で、お優しい方でした。私のことを気になさりながら御令孫の御心を開くような立ち回りなど、とても出来なかったでしょう。伍名様の酒を飲むことも躊躇ったはずです。ならば私は最初から……ひねくれ者の従者でいた方が、気が楽だったのですよ」
「……っ」
拭ったはずの涙が溢れて、また止まらなくなる。
 この青年は、一体どこまであまのじゃくだったのだろう。そして平気そうな顔をして日々神依の世話をし、舞の稽古を見て、飴を包んで、日嗣に傘を差し出して、櫛を掛けていた。
「ばか……馬鹿じゃないの、馬鹿じゃないの……そんな……っ」
「故に、私は一の位を戴いているのです。すぐに諦め、心を閉ざし、何も変わろうとしない。それに私には……一ノ弟のような特別な才もありませんでした。だからずっと自信も無くて、溜めた想いを吐き出す勇気すら持てなかった。そんな馬鹿な禊だったから、巫女は皆愛想を尽かせて離れていってしまうのです」
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