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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第12章 天津水
「……はい。それでようやく、私達“禊”は“人”になれるのです。妹背(いもせ)と共に野に降り……どこかの村に混じるのも、ひっそりと庵を結び過ごすのも、良いでしょう。田畑を耕し、或いは童や禊の間に培った技術があれば、食べていくには事欠かない」
「……それで?」
「……それだけです。仕事を終えて家に帰れば、ずっとずっと、自らが慈しみ愛してきた者が迎えてくれる。やがてその手には、見たこともない小さな命が増えるかもしれない。贅沢はもう、稼いだ分だけしかできませんが……寒ければ身を寄せ合って、ものが無ければあるものを分け合って。……それの何が不幸だと言うのでしょう」
「……ばか……馬鹿じゃないの」
「……神依様」
その、人を罵ることに慣れていないあまりに幼稚な物言いに、禊は場違いだと思えど浮かぶ笑みを隠せなかった。
言葉が進むに連れて仏頂面になり、あんなに泣いたというのにまた目を赤く染めて。
その涙が、それを浮かべさせた心の動きが、禊に取っては何よりの……幸せの片鱗だった。
「……それで?」
「……それだけです。仕事を終えて家に帰れば、ずっとずっと、自らが慈しみ愛してきた者が迎えてくれる。やがてその手には、見たこともない小さな命が増えるかもしれない。贅沢はもう、稼いだ分だけしかできませんが……寒ければ身を寄せ合って、ものが無ければあるものを分け合って。……それの何が不幸だと言うのでしょう」
「……ばか……馬鹿じゃないの」
「……神依様」
その、人を罵ることに慣れていないあまりに幼稚な物言いに、禊は場違いだと思えど浮かぶ笑みを隠せなかった。
言葉が進むに連れて仏頂面になり、あんなに泣いたというのにまた目を赤く染めて。
その涙が、それを浮かべさせた心の動きが、禊に取っては何よりの……幸せの片鱗だった。

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