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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第12章 天津水
「その……やはり、私に抵抗がおありのようでしたら一ノ弟にやらせますので」
「あ……ち、違うの」
ごめんなさい、と神依は今にも立ち上がりそうな禊を慌てて呼び止め、また自己嫌悪にうつむく。
 「……ごめんね、そうじゃないの。やっぱり私……駄目だね。ごめんなさい」
「貴女が謝ることは」
「ううん、いいの。謝らせて。……本当はさっきも、迷ったの。あなたに取っての幸せが、私には分からなかったから」
「私の……幸せ?」
「うん。私といるより……奥社で、洞主様や大兄さんと過ごす方がいいんじゃないかって。でも、今までずっと一緒だったから……禊がいなくなるって思ったら、悲しくて。……こんなこと言うの、卑怯だって分かってる。でもあなたが残ってくれて良かった。ズルいよね。あなたが許してくれるのも知ってる。だから……我儘で……ごめんね」
「……いえ。それでいいと、私は最初から申し上げていたはずです」
「……そっか」
「はい」
 禊はもう一度浴布を絞り直し、腰から臀部を清める。そこに刻まれた朱印は、もう少女が半ば己の手から離れたことを示していた。しかしそれでも──禊の幸せは、ここにある。後ろでも前でも、左右でも、この少女の一歩隣にそれはある。
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