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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第11章 連理
 寸でのところで──少女の純潔は、守られていた。
 彼女が幸福を得るため、神に捧げなければならないその身は、清らかなままだった。
 ふと聞き慣れない、穏やかな声が差し出される。
 「……もう、いいのかい」
 そちらを見れば、暴挙の前と変わらぬ──それどころかそれ以上に優しく、痛みを帯びた笑みを浮かべる男の姿があった。
 禊は何故、と問いかけにも似た恨みの言葉を紡ぎかけ、そのまま飲み込む。
 ──これは、ずっと己が心に溜め込んできた穢れ。愛情という、本当は何よりも尊いはずのものがわだかまって、こずみ、濁り、淀み、膿み、腐ったものだった。
 まだ蝉が鳴いていたころ主が問い、自らが口にした答えを形にしたもの。
 神はただ神依という器を薬でほんの少し溶かして歪め、その分厚い泥土の一部をさらりと撫でたに過ぎない。しかしそれだけで、その淀は決壊して器から溢れた。
 器の歪みは消えない。ずっと痛々しく、その形のまま。それでもあのままでいたら……結ばれた二人を前に、腐った自分は更なる暴虐を主にしていたかもしれない。神をも畏れぬ暴挙を、為してしまったかもしれない。
 「……っう……」
それを考えれば胸がずきずきと重く痛む。
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