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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第10章 身寄り
その、今まで男性の口から聞いたこともないような、花だの姫だの愛だのといった甘やかな言葉の数々に神依は先程とは違った意味で動けなくなる。
 また伍名はそれを心根に嘘偽りなく、冗談でもなく、ましてや嫌味などではなく、真剣に真面目に言っているらしい様子。
 そしてそれに思考を固まらせたのは禊も同じだったようで、明らかに返事に間があった。視線を交わせば即目を反らされ、童だけが「いい神様だな!」と満面の笑みで囁いてくれたが、その無邪気さが今は何だかとても申し訳ない。
 何とも居心地の悪いまま神に従い、しかし部屋に入る間際、神依はその存在を思い出して慌てて庭を振り返った。
「あっ、あの、ウサギが」
「ああ──あれは跳び石を越えられない兎ゆえ、どこへも行けはしない。神の端くれなのだが……いらないかな。可愛いだろう?」
 その、何かを含んだような物言いと表情に神依は少し考え、それから頷いた。
「……はい。それを望まれるなら……私が丁重にお預かりします」
「物分かりのいい子で助かる。……私も何の意味があるかは分からないのだが、あるお方の差し金でね。少し臆病だが、根気よく相手をしてやるといい」
再び頷く神依。
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