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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第10章 身寄り
「……多分……俺も、嫌だった」
「嫌?」
「……お前に、他の神が──男神が依り付くのが嫌だった。お前の名は……そういうものだろう」
「──…」
 腕の中の少女がもぞりと動き、じっと見上げてくる気配がする。
 それでもわざと目を合わせないようにすれば、神依もまたはにかむように頷き、再びその背を日嗣に預けた。
 「日嗣様も……神様だから」
「……」
「だからきっと、神依で良かったんです。というより……洞主様にはもう、断っちゃったんですけど」
「……そうか」
そう言われて喜ばしい反面、日嗣は少しの罪悪感を持って回した腕に力をこめる。
 ……罪悪感。
 “──……好いているのか”
その罪悪感も、風音にかき消された問いも、どちらも腕の中の少女を見守る従者に関してのものだった。
 あの雨の日の邂逅が、脳裏に過る。
 だがあの従者は、きっと何も伝えていないのだろう。そして今も、何も知らないふりをして盃や皿を片付けては、衣を片したり炊事の支度をしている。
 目に見えぬ地中に埋もれながら一心に花を支え、水を送る根。
 ……しかし他所の男が贈った櫛を使い、想う小姫の髪をとくその胸中は……想像しただけで、日嗣にも苦く痛々しい。
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