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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第10章 身寄り
 「嬉しい……。前に、禊が言ってたんです。髪には特別な力が宿るから、綺麗にお手入れして日嗣様みたいに綺麗に伸ばしましょうって。……宝物にします」
「ああ。……そうすれば、お前はきっと淡島の誰よりも美しくなる──」
 日嗣は神依の頬に顔を寄せ、ぎゅ、と腹に腕を回す。愛撫にも似た抱き方。
 互いの衣がくしゃりとしわを寄せ、けれどそこには確実にぬくもりがたまっていく。子をあやすようにゆら、ゆらと緩く体を揺らせば、神依は何か楽しそうに小さく笑った。
 その体は安心したように弛緩していて──もしそれを口にすれば途端に怒って日嗣を跳ね返したかもしれないが──その分だけ重みがあって、それさえも心地好かった。多分これが、幸せの重み。
 「そういえば……」
「ん?」
胸の中で、小さな声がする。
「名前。……日嗣様が私の名前を変えるように言ったって、洞主様から聞いたんです。……どうして?」
「……」
その言葉に、日嗣の中の何かがざわりと揺らぐ。色々あり過ぎて、記憶は薄れていたが魂は忘れていない。
 そして日嗣には、もう分かっていた。神たる魂が荒ぶってまで、それを求めた理由は一つしかない。
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