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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第10章 身寄り
 そういうと猿彦は神依越しに日嗣に向き直り、揶揄するように続けた。
「俺の先導はここまでだぞ、御令孫。邪魔者は消えてやるから、懐にしまいっぱなしのもんちゃんと出してやれよ」
「ッ、彦──」
「あ……」
そして慌てたように呼び止める日嗣に反し、猿彦はじゃあなと一言その姿を風に滲ませて消えてしまう。
 ふと帰るときはどうすればいいんだろうと思ったが、いざとなれば歩きだろう。どうするか問うように日嗣を振り返れば、真っ正面から目が合った。
「……、来い」
「え?」
「座れる場所の方がいい」
しかし日嗣はそれだけを言うと、すたすたと舞台の方に向かって歩いていってしまう。慌てて後を追えば、舞台の片隅にある小さな階段を示され、神依はおそるおそるそこに登った。意外にも朽ちてはおらず、しっかりとしている。
「お芝居とかしてたのかな……」
「奉納演舞や農閑期の娯楽のためのものだろうな。……お前はその縁にでも座っていろ」
「日嗣様……どうしたんですか?」
「だから──……いや、いいから座って、黙って前を向いていてくれ」
日嗣は神依を見ようともせずに、ただ舞台の端を示してそう告げる。神依は何が何だか分からないまま、小首を傾げながらも仕方なくそれに従った。
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