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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第10章 身寄り
しかし禊にできることは、それを隠すために見送る振りをして頭を垂れることだけだった。
猿彦はその痛みを知りながらそれ以上の言葉を発せず、応えるようにその姿を神依と日嗣共々かき消す。
──自分にできることは、道を行く者にその先を指し示すことだけ。歩もうとしない者に、神としてできることは無い。
それでも猿彦は人が好きな神だった。輿や車に乗り道を歩む者もいる。しかしそれを牽くために力を尽くしている者の強さを知り、只人であるが故に歩き出せない歯がゆさ、踏み出す一歩の怖さ、立ち止まる辛さを知り……しかしそういうものこそを、いとおしく思う。
だから、ただ待てとだけ告げた。
この儚く健気な従者には、まだ別の神との縁が纏わっている。
猿彦は、自分にできなかったことを……黙すことで、その縁に託した。
【2】
「ひゃ……っ」
ごう、と一陣の風の音が神依の耳元を通り抜ける。
一瞬何かに吸い込まれるように体が重力を失い、日嗣に庇われながら再び地に足が着いたとき──
「え……わあっ!?」
神依は見知らぬ場所にいて、見たことのない風景を目の当たりにしていた。
猿彦はその痛みを知りながらそれ以上の言葉を発せず、応えるようにその姿を神依と日嗣共々かき消す。
──自分にできることは、道を行く者にその先を指し示すことだけ。歩もうとしない者に、神としてできることは無い。
それでも猿彦は人が好きな神だった。輿や車に乗り道を歩む者もいる。しかしそれを牽くために力を尽くしている者の強さを知り、只人であるが故に歩き出せない歯がゆさ、踏み出す一歩の怖さ、立ち止まる辛さを知り……しかしそういうものこそを、いとおしく思う。
だから、ただ待てとだけ告げた。
この儚く健気な従者には、まだ別の神との縁が纏わっている。
猿彦は、自分にできなかったことを……黙すことで、その縁に託した。
【2】
「ひゃ……っ」
ごう、と一陣の風の音が神依の耳元を通り抜ける。
一瞬何かに吸い込まれるように体が重力を失い、日嗣に庇われながら再び地に足が着いたとき──
「え……わあっ!?」
神依は見知らぬ場所にいて、見たことのない風景を目の当たりにしていた。

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