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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第10章 身寄り
どうしたらいいのか分からず日嗣を見れば、何故か気まずそうにぱっと目を反らされてしまった。
 一方猿彦は屋敷神の祠まで行くとその扉を叩き、出てきた鼠軼と何事かを話し始め──それからすぐに、縁側まで戻り自らの羽扇を取る。
「──孫、いいぞ。一時的に屋敷神の結界を解いてもらった。お前もいい加減腹くくれ」
「……、……神依」
「?」
何故か怒っているような、あの出会った頃のような仏頂面で差し出された手を取り立ち上がれば、その表情に反し何かから庇うように肩を抱かれる。そして、
「悪いな、ちっとお前らの主借りるぞ」
「えっ?」
「お……お待ち下さい、どちらへ──」
「心配すんな、夕方には帰す。それからな──いや」
慌てて駆け寄る禊に猿彦は何かを言い掛け、しかし「心配せずに待ってろ」とだけ付け加えて、羽扇を振る。
 「禊──」
「っ……」
その姿が消えゆく間際、禊にはそれがただの言葉ではないことが分かった。道の神が再びかけてくれた、孤独を癒す慈悲の言葉なのだと分かった。
 神を想い、その神に拐われる主と、神に認められその道を定めてしまった弟分。もはや自らには何もない。
 ……独り。
 それを示すように広がる思考の空洞と、つきつきと痛み出す何か。
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