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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第9章 穂向け
 巫女は神に酔い、神は巫女によって興され、慰めらるる。だとしたら……自らの意思に関係なく異種の暴神に堕ちていく巫女は、ただ哀れでしかない。
 「淡島にいれば、そうなるかもしれないってことですか……?」
「必ずしも可能性は零ではない。そしてそういうとき、一番定められる可能性があるのは処女(おとめ)じゃ」
「それを──それを他のみんなは知っているんですか?」
「知っておる。しかし、今はもう無いとも皆思っておる。そなたにこの話をするのも、そういうこともあり得るという私の杞憂からじゃ。御令孫のそれも、そういう事態を避けるための慈悲であったかもしれぬしな」
「……」
「……いいかえ、神依。そなたはやはり異質ではあるが──今や神々の中では日輪の如く咲き誇った大輪の花。今日明日とは申さぬが、鉄は熱いうちに、ともいうでな。色が褪せぬうちに、一度は縁を結んだ方がよかろうと私は思うておる。……さ、この話は終わりじゃ。代わりにそなたの好くような男(おのこ)の話でも致そうか。そしてやはり好きなだけ、菓子をおあがり」
「……」
 そうして神依は再び菓子を勧められ、しかしそれ以上を求めたらもっととんでもない話をされる気がして、急いで花弁を呑み込むと早々に奥社から退散した。
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